花粉症 ・くしゃみ・鼻水・鼻づまり 春や秋に起こったら花粉症の可能性があります!
アレルギー性鼻炎は、今や国民病と言われる程ポピュラーな疾患となっています。春先のスギ花粉症でお困りの方は多いと思いますが、それ以外にも、ダニやハウスダスト(ホコリ)、ヒノキ花粉、イネ科花粉など、様々な原因抗原によりアレルギー症状を生じている可能性があります。その発症の仕組みは、Ⅰ型アレルギーに沿った形を示し、ホコリ等の原因物質に繰り返し接触することで、体の中にその原因物質に対する抗体(IgE)ができ、鼻の中で原因物質(抗原)と抗体が反応することでヒスタミンが放出され、様々な症状を引き起こすと言われています。抗体産生に関する遺伝的要因や、周囲環境の原因物質の量、大気汚染等の環境要因など、さまざまな因子がアレルギー性鼻炎の発症に関与するとも言われています。
花粉症は、アレルギー性鼻炎のうち樹木や植物の花粉が原因である場合を指し、ある特定の季節に症状が出現することから季節性アレルギーとも言われます。春先に飛散するスギ・ヒノキ花粉に対するアレルギーが有名ですが、その他にも、5月から7月のイネ科植物、8月から10月のブタクサ・ヨモギ等のキク科雑草に対する花粉症もあります。また、ホコリやダニ、ペット等の1年中存在する物質に対するアレルギーは通年性アレルギーと呼ばれます。
スギ・ヒノキに対する春の花粉症は、患者さんの数も多く、症状も他のアレルギーと比較してはるかに重症となることから、毎年、大きな注目を集めています。秋の花粉症は、主に「ブタクサ」と「ヨモギ」が原因となり、東京近郊では「ブタクサ」が8月中旬頃から、その後9月に入ると「ヨモギ」の花粉が飛散し始めます。これらの花粉は、春の花粉と比較すれば飛散数も少なく、また飛散する範囲も限局されるため、症状としては軽症で済む場合も多いのですが、この時期に鼻水やくしゃみ、鼻詰まり等の症状が続くようであれば、風邪以外に秋の花粉症の可能性も疑ってみる必要がありそうです。またブタクサは花粉の粒子が小さいため、容易に肺(気管支)まで入り込み、喘息症状を引き起こす可能性があり、より注意が必要です。
花粉以外のアレルギーの原因物質として比較的多いのは、家の中のホコリに含まれる「ダニ」「ハウスダスト」、あるいは「カビ」、「羽毛」、そしてペットの「動物のフケ」などが考えられます。
アレルギー性鼻炎の診断は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの自覚症状に加えて、鼻の中を観察して、鼻粘膜がアレルギーに特徴的な蒼白浮腫状となっていることや、鼻汁中の細胞の検査(好酸球検査)で行います。最終的には血液検査(血清IgE抗体検査)で診断を確定し、さらに抗原皮膚テスト、鼻粘膜抗原誘発テスト、特異的血清IgE抗体検査(RAST、MAST、CAP)などで、原因物質を特定し、環境整備等により、身の回りの原因物質を出来るだけ取り除く、あるいは減らすことで、症状の軽減を目指すことになります。
花粉症の治療戦略 ・花粉症の治療としては、大きく以下の3つの方法があります。
○薬物療法(内服薬、点鼻薬等)
現在の花粉症治療の中心であり、各種の抗アレルギー内服薬および点鼻薬・点眼薬が用いられます。
基本的な治療方針としては、花粉の本格飛散の2週間程度前または飛散のごく初期の段階から、「初期療法」として、抗アレルギー薬の内服を行います。点鼻薬・点眼薬も、本格的な症状が出現するより前から開始した方が、花粉飛散最盛期の症状を軽く済ますことができると言われています。もちろん、症状が出現してからこられの内服薬、点鼻・点眼薬を開始しても、手遅れということはありません。
抗アレルギー内服薬は種類によって、鼻詰まりに対する効果が強い薬や、鼻水・くしゃみに対する効果が強い薬などに分かれ、1日の服用回数も1回から3回までさまざまです。また、比較的マイルドな効き目の薬から、強い効果の期待できる薬に分類することもできます。反面、効果の強い薬は「眠さ」の副作用も強く出る傾向もあるようです。しかしながら、これらの薬の効果や副作用の強さは個人差も大きく、結局は一人一人の体質や症状に合った薬を見つけ出すことが、花粉症の治療において一番大切なことと考えられます。もちろん、その年の花粉の飛散数も大きく影響しますので、昨年のような記録的な大量飛散の年には、ステロイドを含む強力な薬でもなかなか症状のコントロールが難しかったようです。昨年までの治療薬が有効であった方は、原則として同種の薬から始め、有効でなかった場合には、何が問題であったかを確認し(効果が不十分であった? 眠さの副作用が問題だった?)、問題点を改善出来るであろう薬に変更して始めてもらうことになります。その上で、今シーズンの状況、薬の効果、副作用等を確認しつつ、処方内容の微調整を行います。
シーズンの最盛期には、ステロイドを含む内服薬が必要となる方も多くなりますが、長期間の継続的服用は副作用出現の可能性を高めますので、原則として日常的には通常の抗アレルギー剤を用い、症状が強い時のみステロイド剤を単発的に使用するのが望ましいと考えられます。なお、点鼻については、鼻粘膜からのステロイドの吸収は限定的と考えられることから、初期の段階から積極的に使用して問題ないものと考えられます。また、点眼については、ステロイド点眼は緑内障を悪化させる可能性があるため、使用を最小限にとどめる注意が必要です。

○免疫療法(特異的または非特異的減感作療法)
「特異的減感作療法」は、スギ花粉のエキスを、ごく少量から徐々に量を増やしながら注射し、スギ花粉に対する抵抗力を付けて体質改善を図る方法で、さまざまな治療方法の中で唯一、スギ花粉に対するアレルギー反応そのものを起こさなくする根治的な治療方法です。しかしながら、初期段階では1週間に1回、維持段階でも1か月に1回程度の通院加療(注射)を要し、かつ数年~5年程度の治療継続が必要となります。また、ごく稀ではあるものの、注射後に高度の副作用(アナフィラキシー)が出現することも有ります。
「非特異的減感作療法」は、スギ花粉に限定せず、様々な原因物質に対するアレルギー反応を総合的にコントロールする方法ですが、必ずしも根治的治療法とはなりません。ヒスタグロビンという抗アレルギー物質を1週間に1回、計6回(6週間)を目処に注射しますが、この注射液は人由来の原料から作られますので、未知のウイルス等に対する感染のリスクを完全には否定できないことをご了解頂く必要があります。

○手術療法「鼻粘膜の焼灼手術」
アレルギー反応によって腫脹した鼻粘膜を、手術的に切除あるいは焼灼することでリセットし、アレルギー症状を軽減させる治療方法です。この手術は、アレルギーの体質そのものを改善させる方法ではなく、あくまで局所のアレルギー反応を一時的に抑えるための治療です。したがって、いずれは症状が元に戻ってしまう可能性がありますが、数年間程度はアレルギー症状を軽減する効果が期待できます。
当院では、高周波ラジオ波(サージトロン)による鼻粘膜の焼灼・凝固手術を行っています。内服薬や点鼻薬等ではコントロール不良な高度のアレルギー症状を持つ方(特に鼻詰まり症状の強い方)が対象となりますが、軽症から中等症の方でも、薬剤の使用を減らしたい場合などには手術の行う価値があると思われます。
手術は外来で行います。手術後は一時的に鼻閉症状が強くなりますが、1週間程度で軽快し、1ヶ月程度で手術の影響はほぼ消失します。その間、鼻処置等のため、定期的に通院して頂く必要があります。また、術後暫くは鼻出血を起こし易くなっていますので、過度の飲酒や運動等は控えて頂く必要もあります。
手術に要する費用は、保険3割負担の方で、手術時のファイバー検査等を含めて両側で10,000円程度、片側で7,000円程度となります。
なお、春の花粉症の症状軽減を目的とする場合には、花粉飛散シーズンの1か月以上前には手術を終えることが望ましいと考えられています。
日常生活での花粉症対策
原因となる花粉に触れないことが最も重要です。そのためには、
★花粉は通常晴れて風の強い日の午後に多く飛散し、雨の日に少なくなります。ただし、雨の翌日にはかえって多くの飛散を認めるようです。このような天候と花粉の飛散の関係を十分に認識し、新聞等の花粉情報も有効に活用して下さい。
★外出の際には、マスクを着用し、つばの付いた帽子をかぶりましょう。できればコンタクトよりメガネを!
★外出後にはうがい、洗顔・洗眼を行いましょう。着衣に付着した花粉も、よく払うようにして家に中に花粉を持ち込まないように注意して下さい。
★ 外に干した布団や洗濯物は、花粉を残さないように、よくはたいてから取り込んで下さい。
★ 室内に入り込んだ花粉の除去には、空気清浄器や加湿器の活用も有効な手段の一つです。
★ この時期のゴルフ場は、スギ花粉が溢れています。普段は症状が軽い方も、十分ご注意下さい。
花粉症が終わった後にも注意が必要です
花粉症のシーズンの後半に、副鼻腔炎を併発される方が少なくありません。アレルギーによる鼻汁・鼻閉が続くことで、頬の内側や眼の間にある副鼻腔に炎症を生じ、アレルギー症状とは明らかに異なる粘性・膿性の鼻汁を生じたり頬部の重感・痛みを来たすことになります。花粉症の季節の後も、鼻の症状にご注意下さい。
なお、翌シーズンの花粉の量は、前年の夏の気候に左右されると言われており、暑い夏であればその翌年の花粉は多く、冷夏であれば少ないと考えられます。毎年の夏の気候に注目していて下さい!
いわゆる「一発注射」について
花粉シーズンの初期に、1回注射を行えば、花粉症の症状が改善されるという「一発注射」については、副作用の問題から、原則としてお勧めしていません。この方法は長期間作用型のステロイドホルモンを注射する方法で、確かに健康保険上の適応ではあるのですが、注射跡に瘢痕を生じたり、女性ではホルモンのバランスが乱れるなどの問題を生じる可能性が高いことから、積極的にお勧め出来る治療方法ではないと考えています。職業として自動車運転を業務とされる方で、通常の抗アレルギー剤の治療では、眠さの等副作用が強く出るために服用が困難であるなど、特別な事情のある方のみに、副作用の問題を十分ご理解頂いた上で、例外的に行っておりますことをご承知置き下さい。